D.コピープロテクト解除装置等に対する法的対応について


1.基本的な問題認識


 デジタル化された情報は極めて容易に複製したり、利用することが可能となるため、デジタル・ネットワーク環境においては、コンテンツの無許諾複製や無許諾利用が広範に行われることによって、コンテンツの制作者に大きな経済的損失を与える可能性が生じる。このような無許諾複製・無許諾利用といった問題に対しては、法的な対応もさることながら、コピープロテクトやアクセスコントロール技術等、コンテンツの複製行為や利用行為を実際にコントロールする技術的措置が重要な役割を果たすと考えられる。しかしながら、他方で、かかる技術的措置を解除したり無効化するような行為が行われることによって、技術的措置自体が意味を持たなくなってしまう危険性が想定されることから、このような行為に対して何らかの法的規制を講じる必要があるとの指摘がなされている。
 このような状況の下、本年2月に公表された著作権審議会マルチメディアWGの報告書においては、(a) 複製の禁止又は制限のための技術的な措置が講じられている著作物等の複製物について、当該措置を解除又は回避することにより複製を可能ならしめる技術的装置を製造又は頒布する行為を著作権侵害と見なし、民事救済及び刑事罰の対象とする、(b) 受信の禁止又は制限のための技術的な措置が講じられている著作物等の放送・送信について、当該措置を解除又は回避することにより受信を可能ならしめる技術的装置を製造又は頒布する行為を著作権侵害と見なし、民事救済及び刑事罰の対象とする、との対応例が記述されている。
 また、米国は、本年9月に公表したホワイトペーパーにおいて、米国著作権法を改正し、著作権者の許諾を受けず、または法的根拠なく、106条にもとづく排他的権利の行使を防止または禁止する方法、処置、機構またはシステムを回避、迂回、除去、解除またはその他の方法で回避することを主な目的または効果とするような、装置、製品、または製品に組み込まれた部品の輸入、製造または頒布、またはサービスの提供もしくは履行を禁止する規定を設けるべきである旨の提言を行っている。
 以上の状況も踏まえつつ、具体的に如何なる装置や行為を対象として規制を行うのか、その際規制を行うニーズが実際にあるのか、また、規制を行う場合如何なる法体系によるべきか等の事項について検討を行う必要がある。

2.対応の基本的考え方


 具体的な検討については、著作権審議会における議論を踏まえ、(a) 著作物等の複製を禁止・制限する技術的措置の解除行為等に係る問題、(b) 著作物等の受信を禁止・制限する技術的措置の解除行為等に係る問題に分けて行うことが適当と思われる。

(1) 著作物等の複製を禁止・制限する技術的措置の解除行為等の問題


 今後、デジタル化、ネットワーク化が一層進展した環境の下では、著作物に限らず、例えば企業等の秘密情報や個人情報等の情報やデータについて、複製等を禁止・制限する技術的措置を講じることが重要となることから、このような技術的措置を解除する装置の製造・販売等に対して何らかの法的規制を講じることは必要と考えられる。しかしながら、先述のとおり、複製行為を制限・禁止する技術的措置により保護されるべきと考えられる対象は、必ずしも著作物のみに限られるわけではないことから、このような法的規制は、著作権保護という観点からのみ論じられるべきではなく、例えば情報システムのセキュリティ確保や個人情報保護等、別途の政策的観点も踏まえて、総合的に検討されるべきであると思われる。但し、規制を行う場合であっても、技術的措置の解除機能を有する機器が広範に規制されることは望ましくないとの意見やユーザーによる情報利用を阻害するような過度の規制は望ましくないとの意見が多かった。
(注1)別途の政策的観点に基づいて法的規制を講じるべきとの考えについては、保護されるべきコンテンツの主たる内容は著作物であり、著作権法により保護されるべきとの意見があった。
 なお、同様の問題として、コンピュータプログラムにかけられたコピープロテクトを解除する装置の製造・販売等の行為を著作権法により規制するべきとの意見がある。これについては、EUのコンピュータプログラムの法的保護に関する理事会指令において、「コンピュータ・プログラムの保護のために適用されている技術的装置の無許諾での除去又は回避を促進することのみを目的としている手段を流通させ又は商業用目的で所持する行為を侵す者に対して適切な救済措置を定める」旨が規定されている例が存在する。
 しかしながら、現行著作権法の下では、コピープロテクトを解除してコンピュータプログラムの複製を行う行為は、私的使用目的の複製、プログラムを電子計算機において利用するために必要と認められる限度においての複製等であれば権利侵害とはならないことから、現行著作権法の下で、コピープロテクト解除装置等の製造・販売等の行為を権利侵害とみなすこととするのは、論理的な整合性が取れなくなるとの意見があった。
 また、我が国においてコピープロテクト措置が講じられているコンピュータプログラムはゲームソフトが大宗を占めており、いわゆるビジネスソフトについては基本的にコピープロテクト措置は講じられていないこと等により、我が国においてコンピュータプログラムのコピープロテクト解除装置を規制する必要性が必ずしも明らかではないとの意見もあった。
(注2)この点については、ゲームソフトについては、違法コピー等の問題も生じており、特に海外においてはコピープロテクトを解除することにより違法コピーを行うケースが多発していることから、何らかの規制が必要との意見があった。
(注3)ビジネスソフトにコピープロテクト措置が講じられていないことが多いとの意見については、実際にコピープロテクト措置が講じられているケースも相当存在しており、また、コピープロテクト措置が講じられていないとしても、コピープロテクト解除装置を用いた違法コピーに対して、現在、有効な技術的、法的な方策が存在しないからに過ぎないので、法的規制の必要性を否定するのは疑問であるとの意見があった。他方、法的規制によって、私的目的の複製やバックアップ目的の複製が事実上禁止されることになり、ユーザーによるソフトの円滑な利用が損なわれことなるため問題であるとの意見があった。
(注4)プログラムのコピープロテクト解除装置に関連し、ビデオグラムのコピーガード解除装置については大きな損害が発生しており、当該装置の製造等を規制する必要があるとの意見があった。

(2) 著作物等の受信を禁止・制限する技術的措置の解除行為等の問題


 本問題は、放送、送信される番組等について、受信資格のない者が受信することを防ぐ目的で暗号化する等の措置を講じている場合に、このような措置を解除する装置の製造、販売等を行う行為を法的に規制するというものである。複製を禁止・制限する技術的措置と同様、暗号化等の受信を禁止・制限する技術的措置についても、デジタル・ネットワーク環境において、コンテンツの無許諾利用を防止する有力な手段であり、かかる措置を解除する装置の製造・販売等に対して何らかの法的規制を講じることは必要と考えられる。他方、受信を禁止・制限する技術的措置の対象となるのは、著作物のみに限られるわけではないため、やはり、かかる法的規制は、情報システムのセキュリティ確保や個人情報保護等の別途の政策的観点も踏まえて、総合的に論じられることが望ましいと考えられる。なお、その際、無限定な機器規制やユーザーによる情報利用の阻害といった事態が望ましくないのは、本問題においても同様である。
 他方、このような法的規制を著作権法により行うことについては、著作権法の目的との整合性を確保できなくなるとの観点からも適当ではないと考えられる。即ち、現行著作権法の下では、放送番組等を受信する行為自体は如何なる権利の対象にもなっておらず、権利侵害行為には該当しないため、受信を禁止・制限する技術的措置を解除する行為等を著作権法で規制することは適当ではないと考えられる。また、複製に係る技術的措置の場合と同様、受信を禁止・制限する技術的措置により保護されるべきと考えられる対象は、やはり、必ずしも著作物のみに限られるわけではないため、この点からも著作権法により対応することは適当ではないと考えられる。
(注5)複製を禁止・制限する技術的措置の場合と同様、別途の政策的観点に基づいて法的規制を講じるべきとの考えについては、保護されるべきコンテンツの主たる内容は著作物であり、著作権法により保護されるべきとの意見があった。

 以上より、複製や受信を禁止・制限する技術的措置の解除行為等については、新規立法の制定等により対応を図ることが望ましいと考えられるが、いずれにせよ、如何なる法体系で措置するかも含め、今後更なる検討が行われるべきと考えられる。

(参考)各国における関連立法及び判例







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