





情報技術開発プロジェクトの紹介 (産業用自由電子レーザとその利用技術)
キーワード:
- 高輝度電子ビーム加速器、アンジュレータ、光共振器、光伝送系、産業用自由電子レーザ、赤外領域から紫外まで広波長域波長可変レーザ、音響効果をともなう極短パルス高出力レーザ、自由電子レーザの利用研究、生体アブレーション、超高速光変調、安定同位体分離
プロジェクト名:
- 産業用自由電子レーザとその利用技術の研究開発 [-> FELI web server]
研究実施場所:
- (株)自由電子レーザ研究所
- 〒573-0128 大阪府枚方市津田山手二丁目9番5号
プロジェクトコーディネータ:
- (株)自由電子レーザ研究所
- 氏名:永井 昭夫
- 所属:センター長
- 住所:〒573-0128 大阪府枚方市津田山手二丁目9番5号
- 電話:0720-96-0414
- FAX:0720-96-0421
- E-mail:nagai@feli.co.jp
研究開発の概要:
- 産業用自由電子レーザ及びその利用技術の研究開発を行う。これを達成するため高輝度電子加速器と電子ビーム輸送系、高精度ウイグラ、高耐力光共振器、光伝送系等を開発して、赤外、可視、紫外域でレーザ発振を行い、これを用いてレーザアブレーション、半導体超格子構造による超高速光変調など自由電子レーザの波長可変の特長を生かした新しい光量子プロセシング技術の研究開発を行う。 [->図−1 研究開発体制]
プロジェクトの目的:
- 本研究は、赤外領域から可視、紫外領域の一部まで、波長可変でかつ大出力・高効率となる自由電子レーザ及びその利用技術、特に自由電子レーザの波長可変を生かした新しい光量子プロセシング技術を開発することを目的とする。
これまでの研究成果と期待される成果:
- <これまでの研究成果>
自由電子レーザ装置建設開始2年半で、以下のような世界最高水準の成果が得られている。
- 高輝度電子入射器の開発
安定して動作できる熱陰極型電子銃開発で、従来の性能を10倍程度上回る高輝度化を達成し、FEL発振成功に寄与した。
- 長パルス幅高安定RF源の開発
従来にない長パルス幅の高安定RF源[24μsで0.08%以内(従来のものは5μs、1%)]の開発を行い、加速器性能;エネルギー165MeV、ピーク電流値40A、ミクロパルス幅10ps、マクロパルス幅24μsを実現し、従来にない極短パルス・大出力の加速器性能を達成した。
- 装置開発1年以内で赤外〜可視域の2台の自由電子レーザ装置で発振
上記要素開発を踏まえ、2台のアンジュレータ・光学系で自由電子レーザ発振に成功。高調波レーザ発振を含めて0.63μm(可視光赤色)から赤外20μmまでの範囲でレーザ発振をカバーした。なお、開発期間も2台のレーザ発振を1年以内で達成し、従来世界各所で行われた開発期間数年を大幅に短縮できた。
- 高速波長可変(チューナビリティ)の達成
高精度アンジュレータの開発により、発振波長2倍までの範囲は数秒間で遠隔連続操作が可能になった。
- 虫歯の研磨と表面硬化で最適波長を発見・確認
波長9.4μmの自由電子レーザを抜歯に照射し、アブレーションによる研磨作用が確認されるとともに、ハイドロキシアパタイトの結晶性が向上し、歯の表面硬化が生じていることを発見した。
- 世界で8番目の自由電子レーザ利用研究施設を完成
1977年にスタンフォード大学で波長3.4μmの自由電子レーザ発振に成功して以来、サブミリ波より短波長領域の自由電子レーザ研究施設は世界で50以上あるが、利用研究に利用できる施設は、レーガン大統領によるSDI(宇宙防衛構想)計画で3000億円が投資されたこともあって米国がもっとも多く、表1に示すようにスタンフォード大学、カリフォルニア州立大サンタバーバラ校、ロスアラモス国立研究所、バンダビルト大学、デューク大学の5つ、オランダ国FOM、仏国LUREの各1ヶで合計7つしかなく、自由電子レーザ研究所は装置開発1年半で世界で8番目の自由電子レーザ利用研究施設を完成した。
- <今後に期待される成果>
- 遠赤外、赤外、可視・紫外の広波長域をカバーできる世界初の自由電子レーザ研究施設
表1に示したように、世界各所に7台の施設があるが、その多くのものは赤外〜遠赤外をカバーするのみで、本研究所のように遠赤外、赤外、可視・紫外をカバーするものは、他に例がない。 [->表−1 FEL利用研究施設の電子加速器、FEL出力、研究テーマなど]
- 自由電子レーザビーム同時分割分配方式の開発
一般にレーザビームはよく絞られているため、ビームスプリッタによる反射と透過による分割分配方式がとられているが、反射率が波長に依存するため、自由電子レーザのように波長可変なレーザの同時分割分配には適さない。当研究所で開発中の波長に依存しない自由電子レーザビームの同時分割分配方式は、自由電子レーザ装置の光共振器の出力ミラーの1mmφ出力孔から取り出された自由電子レーザが、回折によってビーム径が数cmに広がった状態で数十m先の実験室に伝送されるのを利用する。当研究所で発明した同時分割分配方式は、直径数cmのケーキを扇状に切り分けるように各実験室の扇状反射ミラーで分割分配する。(各実験室の扇状ミラーは重ならないように配置することはいうまでもない。)この方式によって、自由電子レーザを同時に何ヶでも使用できるようになるので自由電子レーザの利用効率が向上する。
- 世界最短波長自由電子レーザの初発振
現在の電子リニアックによる自由電子レーザの世界最短波は、ロスアラモス国立研究所で1993年に達成した0.37μmである。当研究所では、155MeV電子ビームを用いてアンジュレータ3で1995年12月0.35μmの世界短波長発振に成功、現在0.278μmまで記録を更新中であり、最終的には0.23μmまでを狙っている。この結果はX線領域の自由電子レーザ装置開発に繋がるものとして世界的に評価を受けている。
- テラヘルツ帯超高速光制御型光変調素子の開発
バンドキャップの異なる二種類の半導体を積層した量子井戸構造では、井戸中に離散的な電子エネルギー準位(サブバンド)ができるが、2つのサブバンドのエネルギー差に対応する波長の光を照射して、共鳴励起により低準位の電子密度が減少し、その結果バンド間吸収(電子−正孔)が増大することを利用してテラヘルツ帯超高速光制御型光変調素子を開発中である。
- 自由電子レーザによる分子振動の選択的励起による新材料の創製
アモルファス材料などの局所的、ある種構造だけを選択的に励起して、結晶構造の乱れを少なくしたり、半導体の電気伝導度などの電気特性を変えられるので、高温動作が可能なSiCの低温での結晶化やa-Si太陽電池の高耐力化などを試みている。
- 分子振動の選択的励起による新加工・改質技術の開発
従来レーザによる歯やコレステロールの分解では、分子構造全体を振動させて加工や分解をしているが、自由電子レーザの波長を変えながら分子構造の局所的、選択的励起振動により自由電子レーザのエネルギーを有効に利用する新しい加工・分解技術を開発している。
- Siの分子法レーザ同位体分離
Siの同位体には28Si(〜92%)、29Si(〜5%)、30Si(〜3%)の3種類があり、30Siは(n,r)反応で31Pに変わるためSi中に均一にPをドープ出来る。強力な10.5μm赤外域自由電子レーザを用いてSi化合物を振動励起し、30Siの同位体を分離する実験は初めての試みで、30%の濃縮を目指している。
目標とするグループ:
研究参加機関:
- 三菱電機株式会社
- 住友電気工業株式会社
- 関西電力株式会社
- 三菱重工業株式会社
- 株式会社日立製作所
- 株式会社 東 芝
- 松下電器産業株式会社
- 石川島播磨重工業株式会社
- 株式会社神戸製鋼所
- 日本電気株式会社
- 日新電機株式会社
- 株式会社ダイヘン
- 団法人レーザー技術総合研究所
使われる情報/通信技術:
- JICST文献情報、自由電子レーザ研(FELI)ホームページ、等
情報社会への恩恵:
- 波長可変な自由電子レーザの原子間結合ボンド共鳴波長の利用
従来のレーザ(気体、液体、個体、半導体の各種レーザ)は、波長固定のものが主であり、その多くは近赤外、可視、紫外域(1.5〜0.2μm)に集まっているので、従来レーザでは利用研究がされていない波長利用分野が多く残されている。また、遠赤外、赤外域(100〜1.5μm)での従来レーザはCO2レーザ、COレーザ、Er−YAGレーザなど数は限られている。
遠赤外から紫外域の波長領域で自由電子レーザを利用することにより、未開拓なレーザ利用分野(特に、レーザの波長と原子間結合ボンドとの共鳴的な利用)の拡大が期待できる。これまでの研究成果で説明した、歯のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトのPO4結合ボンドの共鳴波長が9.4μmであることを利用する歯の研磨、表面硬化への利用、超高速デバイスとしてのテラヘルツ帯半導体超格子構造の特性評価、そのほか12.6μmの自由電子レーザによるSiCのアニーリングなど格子振動現象を利用する新材料の創製が期待される。
- 自由電子レーザの短パルス高出力特性の利用
先に説明した波長可変の特長に加えて、自由電子レーザの短パルス高出力特性はレーザエネルギーによる被照射体の熱効果を低減するのに極めて有効で、特に6.4μm波長でのレーザメスとしての利用や細胞質を痛めないでリンパ球などの細胞膜に穴をあけ、9.4μm波長での痔取りや歯の研磨、表面改質など、利用分野は広がるばかりで新しい医療産業の創成など波及効果は極めて大きい。
- 自由電子レーザの音響効果
この効果はまだ未知の領域に属するが、自由電子レーザによる原子間ボンド共鳴効果と同時に超音波効果による原子間の相互作用を分離独立して観測する必要があり、新しい科学分野を切り開くツールとして波及効果は大きい。
想定される費用:
- 86.311億円 [->表−2 年度別予算]
データ作成日:
- 1995年11月15日
データ更新日:
- 1997年12月22日
- 1998年10月23日
情報提供者:
- (株)自由電子レーザ研究所
その他:
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